starposの日記

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「本質を見抜く力」 養老孟司,竹村公太郎 PHP新書

この本のメッセージ

モノの言語化は,情報化であり,単純化,一般化である.モノを見ずに,情報に埋もれていると,本質を見失う.我々は今こそ,モノから見ることで,本質を捉える努力を意識的にしていかなればならない.

感想

「脳」に興味がある日本人は,遅かれ早かれ必ずといっていいほど養老孟司という人物を知ることになるのではなかろうか.
最近彼は,対談本を出すことが多い.おそらく,対談本という形式は,自分から本を書き起こすよりもよほど少ない労力で本を制作できるのではなかろうか.これまでにたくさんの本を出してきた養老孟司ならばまだ許せる範囲であるが.養老孟司に興味を持った方は,まずはもっと昔の彼の著作を読んで頂きたい.「唯脳論」とか.「バカの壁」とか.

この本では,竹村公太郎(元国土交通省河川局長)が出してくる日本のインフラである環境,食料,エネルギーに関する統計データを元に,養老孟司と対談しながら日本の抱える問題点について議論していく.結論は,先のメッセージに書いた通りである.政治家や官僚を悪とする論調ではなく,むしろ何か問題があるとすぐに悪者探しをしがちな現代日本人は,「モノ」を見ていない,と警鐘を鳴らしている.

農業経済の専門家である神門善久を迎えて3人での対談を収録した第6章「日本の農業,本当の問題」は,これだけでも読む価値はある.ここで紹介されていた神門氏の著作「日本の食と農」は読んでみたいと思う.

私はこの本のメッセージに大いに共感する.政治経済の本質を理解したければ,人間を見る必要があるように.情報技術の本質を理解したければ,それを処理するハードウェアを見る必要があるように.